比較日本文化研究会2022年度研究大会
以下の通り2022年度の研究大会を開催いたします。参加ご希望の方は、本記事の末尾にある「参加申し込み」から登録をお願いいたします。
★研究大会テーマ★
近代における大衆芸能の地域受容
日 時 2022年11月5日(土)13:00~16:30
実施方法 オンライン開催(Zoom使用)
近現代における大衆的な芸や物語の享受のされ方を考察しようとするとき、まずはレコード、ラジオ、映画などによる複製文化、流行の拠点としての都市文化が関心の対象となるかもしれない。しかし一方では、対面による上演文化にも媒介され、複雑に蛇行しながら、それらは人々に共有され、楽しまれ、記憶されていった。近代とは、巡業する大衆芸能にとっていかなる時代であったのか。今回は「大衆芸能の地域受容」というテーマの意義と可能性について議論を展開してみたい。
開催主旨 真鍋 昌賢(北九州市立大学 教授)
「問題提起―浪曲における巡業例をとりあげて」
発 表 薗田 郁(大阪大学 特任研究員)
「節劇にみる大衆芸能の地域受容」
節劇(浪花節芝居)は浪花節に合わせて役者が演じる芝居である。浪花節の隆盛に伴って明治半ば頃に現れ、明治末から大正初めまで大都市で盛んに演じられたが、それ以降はあまり見られなくなった。ところが地方都市や都市部を離れた地域では昭和期に入ってからもしばらくの間、興行が恒常的に成立していた。統計による興行記録や新聞記事から窺える地方(主に四国)での節劇隆盛の概況を踏まえつつ、上演形態の特徴や演者からの視点も加え、節劇からみた大衆芸能の地域受容の在りようを考えてみたい。
土居 郁雄(芸能研究家)
「湊座と末裔(わたし)」
明治18年、広島県尾道市土堂町に開場した寄席の「湊座」は、沖仲仕として重きをなしていた席主が、浄瑠璃好きが高じ建設した。演芸を中心に提供していたが、昭和20年戦禍で焼失。戦後はプロダクションを経営した。そんな湊家から譲り受けた資料には、来演者名等が記されている。これに湊座の舞台を踏んだ方から聞き取りしたことどもを加え、尾道と言う漁業の街で、芸能を供給した湊座が果たした役割を探ることにした。なお、調査は未だ不十分なので、経過報告と受け止めて頂ければ幸いである。
コメント 神山 彰(明治大学 名誉教授)
鵜飼 正樹(京都文教大学 教授)
★参加申し込み・・・下記リンク先から、登録をお願いします(締め切り:10月31日)。締め切り日以降に、当日参加用のリンクを送信させていただきます。
参加申し込みフォーム☛☛☛ https://forms.gle/8fsao5rKB5QcZXWL9
★研究会についての問い合わせ先メールアドレスは、参加申し込みフォームのトップにあります。
*本研究会は、科学研究費助成事業基盤研究(C)「近代日本の大衆演芸ジャンルにおける音楽と芝居の交叉とその変容―節劇・俄・音曲漫才」(21K00113:研究代表者 薗田郁)との共催です。
比較日本文化研究会の連絡用ブログです。
研究会雑誌『比較日本文化研究』(発売は風響社)は、第20号の刊行をもって、休刊しました。
なお、はてなダイアリー終了に伴い、はてなブログに移行しました。
本サイトが「移行後」のサイトです(2020.06)。
https://hikakunihon.hatenadiary.org/
第20号
- 発売は風響社です。
- なお今号をもって、休刊となります。
大会テーマ:民俗学と地域貢献
日時:2018年12月9日(日) 10:30〜15:00
会場:京都学園大学京都太秦キャンパス_E301号教室(京都市右京区山ノ内五反田町18)
-https://www.kyotogakuen.ac.jp/outline/campus/uzumasa/
発表1:大堰川に大筏を流す―枯れた生業技術はコモンズ再生の契機となるか
- 発表者:手塚恵子(京都学園大学)
大堰川(保津川、桂川)に、京筏組の12連筏が年に一度流れるようになって、10年近くになります。学園大の民俗学研究室は、大堰川のダムや川ゴミについて考えるNPOのスピンオフ企画として、かつて大堰川の上流と下流を結び富を循環させていた12連筏を復活させるプロジェクト(京筏組)の開始にあたって、地域の大学の民俗学研究室として、聞き書きのスキルと人的資源を見込まれて、参加が求められました。途絶えていた筏の技術を聞き書きで書き起こすことから始め、鍛治技術の継承、記録の作成、運営資金の勧進元として、いつのまにかプロジェクトの核を担うようになりました。
大筏は京の都をつくった筏として注目もされ、大堰川のアイコンとしての役割を一定程度は果たせたように思います。一方で、気候変動の影響もあってか、年々大堰川流域の山川の状況は悪化しています。スピンオフ企画の発端であった、流域の人々が手を取り合って、上流の山々、本支流の川を保全する目標は遙か彼方に霞んでいます。
民俗技術の復元ではなく、コモンズの再生!私たちの企みは壮大すぎるのでしょうか。
発表2:協働と共創の民俗文化に向けて―祭りと文化財レスキューの現場から
- 発表者:川村清志(国立歴史民俗博物館)
果たして民俗学に地域貢献は可能なのだろうか。その答えは、発表の場で結論づけるとして、そもそも私には、この言葉に違和感がある。「貢献」や「還元」という言葉に根源的について回る上から目線(非対称性とか言った方が学問っぽいだろうが)に、私は生理的な忌避感を感じる。実際のところ、地域に貢献する応用的な術を、民俗学者は何一つ持ち合わせていない。そもそも民俗学のカリキュラムには、何らかの「貢献」のスキルを学ぶ機会など設けられてはいないのだ。
もちろん、私自身の調査を地域への貢献と思ったことはない。それらが地域に対して果たした役割があるとするなら、私たちがお互いの距離を図りながら、「共にある現在」を生きてきたことに尽きる。ここでは現地の人々と語り合い、取り組んできた能登の祭りの営みと気仙沼での文化財レスキューの一端から、貢献ではなく「協働」を、還元ではなく「共創」の可能性こそを、探っていきたいと考える。