大会テーマ 島嶼社会を考える

開催の趣旨

   島嶼とは四方を海に囲まれた地域であり、相対的に<本土>より規模が小さく、また地理的境界が明確であるがゆえに、<内部と外部>をめぐる諸課題が顕在化・先鋭化しやすいと考えられる。この意味で島嶼社会は社会の縮図であり、比較的モデル化を試みやすい地域であると言えるだろう。
 本大会では2人の研究者による事例研究を通じ、島嶼、ひいては<島国>日本のありようについて考えてみたい。(村上和弘)

日時
2016年12月10日(日) 13:30〜17:00

:会場場所:神戸女子大学教育センター(三宮キャンパス)
-(神戸市中央区中山手通2-23-1)
-アクセス・地図等はこちらを御参照ください。
-研究大会終了後に、近隣にて懇親会を行う予定です。

発表1   地域資源の生成過程におけるコミュニティの実践

木原弘恵氏(神戸大学大学院農学研究科 地域連携センター)

[概要]
 地方創生の掛け声のもと、持続的な社会を目指した地域の取り組みが、各地で実施されている。ただ、こうした地方に対する施策は今に始まったことではなく、戦後の高度成長期以降、都市への人の移動が急速に進み、人口減少していく農山村では長らく模索されてきた。人口減少の一途を辿る地方社会のなかでも、本報告でとりあげる島嶼という場所は、四方海に囲まれ、地理的に本土と隔絶している。そのため、本土と対比して、後進性が強調されがちであり、離島振興法の制定などにより、その後進性の「改善」が目指されてきた。地域を、このように「改善」の対象としてみる視点は、国土保全の問題と結び付けられることも多い。このことは、近代国家成立以来、国家を支えるために、地方社会から都市へ人やモノの収奪があったことを示唆するものでもある。
 本報告は、地域社会の存続について検討するものではあるが、都市/農山村、あるいは本土/島嶼の格差ではなく、そこで暮らす人びとの視点から検討しようとするものである。近年、各地で、地域資源になりうるものを見出すことが促進されている。本報告では、瀬戸内海島嶼部のコミュニティによる、内部/外部の資源利用のありようを考察する。具体的には、休耕地に自生していた桑の木を地域資源として再発見していくプロセスにおいて、人びとが、外部へ依存しつつ、共同性の維持をどのように成り立たせてきたのか考えてみたい。

参考:
木原弘恵,「文化財指定と『担い手』の実践 ―二つの踊りの来歴をめぐって」,『関西学院大学社会学部紀要』(121),107-117, 2015.
木原弘恵,「地域伝統文化をめぐる再編過程の一考察 ―岡山県笠岡市白石島・踊会の対応を事例に」,『生活文化史』(67), 35-47, 2015. ほか

発表2   「島嶼性」による島の社会関係とその変化─沖縄県浜比嘉島の架橋化を事例として─

前畑明美氏(法政大学 沖縄文化研究所)

[概要]
 島ならではの特性─「島嶼性」は、多様な要素から構成されている。諸要素のうち、日本でまず挙げられることの多い「環海性・隔絶性・狭小性」は、島が一般にマイナスイメージを持たれる所以であるが、またそれゆえ、協力的な生活体系が島々に存在することも周知のように思われる。しかし、その協力的な生活体系の成り立ちに他要素が深く関わる点について、人々の意識や関心は希薄である。「集合性・集約性・温存性」はコミュニティの形成・維持に不可欠な存在であるし、またそこでのネットワークづくりには「伝搬性・拡散性・開放性」が関与している。島という基盤の上に人々は縦糸・横糸でつながり、他島へとネットワークを広げながら海洋島嶼文化が醸成されていく。
 このように、人と人、人と島、島と島をつなげて社会関係を創り出す、その源が「島嶼性」であり、持続可能な島嶼社会の基礎をなすものである。本発表では、戦後日本でみられるこの「島嶼性による島の社会関係」の変化について、沖縄県浜比嘉島の架橋化の事例から明らかとし、それが今日の島嶼国日本においてどのような意味を有するのかを考えてみたい。

参考:
前畑明美,『沖縄島嶼の架橋化と社会変容―島嶼コミュニティの現代的変質』,御茶の水書房,2014. ほか

司会・コメント   村上 和弘(愛媛大学

参考:
村上和弘,「『上書き』される朝鮮通信使 −対馬・厳原における<日韓交流>をめぐって」,『東アジア近代史』(17),21-37,2014.
村上和弘,「変則貿易の時代 −戦後対馬における日韓『交流』の諸相」,『島嶼研究』(17-1),21-45,2016. ほか

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