大会テーマ:民俗学と地域貢献

日時:2018年12月9日(日) 10:30〜15:00

会場:京都学園大学京都太秦キャンパス_E301号教室(京都市右京区山ノ内五反田町18)

-https://www.kyotogakuen.ac.jp/outline/campus/uzumasa/

趣旨

 地域の暮らしの中から、私たちの来し方行く末を考えることは、民俗学の基となるものである。民俗学を地域社会と切り離して考えることはできない。その一方、地域社会への貢献が様々な分野で求められる近年の趨勢のなかで、民俗学は地域の有形無形の民俗文化を地域振興の資材として転換させる役割を強く求められている。果たして、民俗学は社会からの要請に求められるままに、それに応じるだけでいいのだろうか。
 本研究会では、発表者による事例の報告を受けたのち、発表者、コメンテーター、フロアの皆さんと共に、民俗学と地域貢献について考えていきたい。

発表1:大堰川に大筏を流す―枯れた生業技術はコモンズ再生の契機となるか

 大堰川保津川桂川)に、京筏組の12連筏が年に一度流れるようになって、10年近くになります。学園大の民俗学研究室は、大堰川のダムや川ゴミについて考えるNPOのスピンオフ企画として、かつて大堰川の上流と下流を結び富を循環させていた12連筏を復活させるプロジェクト(京筏組)の開始にあたって、地域の大学の民俗学研究室として、聞き書きのスキルと人的資源を見込まれて、参加が求められました。途絶えていた筏の技術を聞き書きで書き起こすことから始め、鍛治技術の継承、記録の作成、運営資金の勧進元として、いつのまにかプロジェクトの核を担うようになりました。
 大筏は京の都をつくった筏として注目もされ、大堰川のアイコンとしての役割を一定程度は果たせたように思います。一方で、気候変動の影響もあってか、年々大堰川流域の山川の状況は悪化しています。スピンオフ企画の発端であった、流域の人々が手を取り合って、上流の山々、本支流の川を保全する目標は遙か彼方に霞んでいます。
 民俗技術の復元ではなく、コモンズの再生!私たちの企みは壮大すぎるのでしょうか。

発表2:協働と共創の民俗文化に向けて―祭りと文化財レスキューの現場から

 果たして民俗学に地域貢献は可能なのだろうか。その答えは、発表の場で結論づけるとして、そもそも私には、この言葉に違和感がある。「貢献」や「還元」という言葉に根源的について回る上から目線(非対称性とか言った方が学問っぽいだろうが)に、私は生理的な忌避感を感じる。実際のところ、地域に貢献する応用的な術を、民俗学者は何一つ持ち合わせていない。そもそも民俗学のカリキュラムには、何らかの「貢献」のスキルを学ぶ機会など設けられてはいないのだ。
 もちろん、私自身の調査を地域への貢献と思ったことはない。それらが地域に対して果たした役割があるとするなら、私たちがお互いの距離を図りながら、「共にある現在」を生きてきたことに尽きる。ここでは現地の人々と語り合い、取り組んできた能登の祭りの営みと気仙沼での文化財レスキューの一端から、貢献ではなく「協働」を、還元ではなく「共創」の可能性こそを、探っていきたいと考える。

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(研究会事務局)

京都学園大学人間文化学部 佐々木研究室
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