事務局および運営委員一覧(2017.12.10現在)
運営委員 (50音順)
飯倉義之 (國學院大學)
浮葉正親 (名古屋大学)
梅野光興 (高知県立歴史民俗資料館)
表智之 (北九州市漫画ミュージアム)
香川雅信 (兵庫県立歴史博物館)
川村邦光 (大阪大学)
川上郁雄 (早稲田大学)
川森博司 (神戸女子大学)
金容儀 (韓国・全南大学校)
小松和彦 (国際日本文化研究センター)
才津祐美子(長崎大学)
佐々木高弘(京都学園大学)
橘弘文 (大阪観光大学)
手塚恵子(京都学園大学)
テモテ・カーン (関西学院大学非常勤講師)
土居浩 (ものつくり大学)
徳永誓子(岡山大学)
永原順子(大阪大学)
魯成煥 (韓国・蔚山大学校)
堀田穣(京都学園大学)
松村薫子(大阪大学)
真鍋昌賢 (北九州市立大学)
丸山泰明(天理大学)
村上和弘 (愛媛大学)
村山弘太郎(京都外国語大学)
安井眞奈美(国際日本文化研究センター)
山泰幸(関西学院大学)
大会テーマ|朝鮮学校と日本社会 ―韓国人研究者の民族誌(エスノグラフィー)を通して―
開催の趣旨
戦後(解放後)60年以上にわたって在日コリアンの民族教育を担ってきた朝鮮学校が逆風にさらされている。最近では、高等学校授業料無償化の適用除外、地方自治体による補助金打ち切り、「在特会」の会員による学校襲撃など、日本社会の圧力が急速に高まっている。北朝鮮=絶対悪であり、そこに繋がる朝鮮学校などなくなって当然という「空気」がいつの間にか醸成されているようである。
この研究大会では、関西の朝鮮学校や民族学級でフィールドワークを行い、1冊の民族誌を刊行した宋基燦氏(大谷大学助教)をゲストに迎え、朝鮮学校における教育実践の具体的な内容を報告していただく。日本で生まれ日本語を母語とする在日コリアンの生徒が朝鮮学校で何を学び、どのようなプロセスで「朝鮮人らしさ」を身につけていくのか。韓国人研究者の民族誌を通して、異文化として朝鮮学校を理解する視点を議論していきたい。司会:浮葉正親(名古屋大学国際言語センター教授)
- 日時
- 2013年12月08日(日)14時〜17時30分(開場13時30分)
- 会場
- 神戸女子大学教育センター(三宮キャンパス)5階特別講義室
-アクセス・地図等はこちらを御参照ください。
宋基燦(ソン・ギチャン)氏(大谷大学文学部助教)
[要旨]
朝鮮学校は日本で最も大きい外国人学校組織である。ところが、政治的に北朝鮮を支持している総連によって運営されている事実から、朝鮮学校への一般的な理解の中には北朝鮮と関連付けた批判的なものが多く、これは「高校無償化」政策の対象から朝鮮学校だけが除外された差別の現実とつながっている。朝鮮学校の現場をよく知っている在日コリアンのなかでも、朝鮮学校の教育は北朝鮮の国民主義的教育内容を踏襲している時代遅れのものと思っている人が少なくない。
確かに朝鮮学校の教育は一見国民主義的であり、強力な集団主義に基づき、個人を抑圧する教育のように見える。ところが、長年の現場調査を通じて報告者は、決して「国民主義的教育」に包摂されない「自由な個人」の姿も共存していることを確認した。そこで本発表は、まず朝鮮学校ができるまでの歴史を振り返り、その現況を察した上で、朝鮮学校の教育の持つ意味について考えたい。
朝鮮学校の実践から生まれるものは、戦略的に本質主義に頼らざるを得なかったアイデンティティ・ポリティクスの行き詰まりを回避しながらも、個人的次元へと脱構築されることをも避けることができる、個人におけるアイデンティティの管理能力である。
[プロフィール]1970年、韓国生まれ。韓国・漢陽大学文化人類学科卒業、同大学院修士課程修了後来日。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。京都大学、筑波大学、神戸女学院大学の非常勤講師を経て現在大谷大学社会学科助教。
著書:『「語られないもの」としての朝鮮学校―在日民族教育とアイデンティティ・ポリティクス』(岩波書店、2012)
ほか
コメント1 金泰植(キム・テシク)氏(獨協大学・聖心女子大学・日本体育大学非常勤講師)
[プロフィール]1980年生まれの在日朝鮮人三世。茨城朝鮮初中高級学校、朝鮮大学校外国語学部卒業。九州大学大学院比較社会文化学府博士課程在籍時にソウル大学校社会科学大学院社会学科へ交換留学、ソウル大学校日本研究所での補助研究員を経て現在に至る。専門は社会学、研究テーマは「朴正煕政権におけるヘゲモニーの構築と在日朝鮮人」
論文:「祖国とディアスポラ―1970年代韓国映画における在日朝鮮人表象」、松田素二・鄭根埴編『コリアンディアスポラと東アジア社会』(京都大学学術出版会、2013)
論文:「在外国民参政権と在日朝鮮人の国籍をめぐる政治」『マテシス・ウニウェルサリス』vol.13、獨協大学国際教養学部、2012.
ほか
コメント2 川森博司氏(神戸女子大学文学部史学科教授)
[プロフィール]1957年生まれ。大阪大学大学院文学研究科後期博士課程中退。博士(文学)。韓国・蔚山大学校専任講師、国立歴史民俗博物館助手、大阪大学文学部講師、甲子園大学人間文化学部助教授を経て、2005年より現職。専門は民俗学・文化人類学。
著書:『日本昔話の構造と語り手』(大阪大学出版会、2000)(単著)
著書:『日本の民俗3 物と人の交流』(吉川弘文館、2008)(山本志乃・島村恭則と共著)
論文:「当事者の声と民俗誌―日本民俗学のもうひとつの可能性―」『東洋文化』93:199-218.2012.
論文:「記憶から声へ―共同作業としての民俗誌の可能性―」、岩本通弥編『現代民俗誌の地平3 記憶』朝倉書店、pp.72-89.2003.
ほか
大会テーマ|戸籍と国籍―「日本」「日本人」の境界を問い返す―
-アクセス・地図等はhttp://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/を御参照ください。
David Chapman氏 (南オーストラリア大学)
[概要] 小笠原諸島という小さな島々は、これまで居住地、植民地、占領地など極めて特異な特徴をなす場所であった。この島に最初に住みついたのは1830年代の欧米人や太平洋諸島民であった。島は1875年に日本に占領され、当時の居住者は強制的に戸籍に入れられた。1877年から1882年の間に、彼らは外国人から日本人になる、明治期の最初の帰化者となった。彼らは近代戸籍の中で外国人としてまとめて登録されたのだ。これらの人々の子孫は、辺鄙な島で、西洋人風の風貌や背景にもかかわらず日本人として日本という国民国家の中に暮らしてきた。
第二次世界大戦中、小笠原諸島の住民は危険を避けるために本土へ疎開させられた。戦後、1952年まで島は連合軍の占領下にあり、その後、連合軍の海軍が1968年まで統治した。この23年間、島は日本から行政的に分離されたが、いわゆる欧米系の住民だけが帰島を許された。戦時中、戸籍の記録は散逸し、島が連合軍に統治されている間、日本の官僚は島にほとんど注意を払わなかった。このように日本の領土から切り離されたため、島民の地位はあいまいに、かつ不安定になり、記録は不完全となった。1968年に島が日本に「返還」されることになると、島民は日本人として帰島するか、アメリカ合衆国へ移住するかの選択を迫られた。帰島した住民は、日本人として再度、戸籍に入れられた。
本発表では、これまであまり知られていなかった小笠原諸島の歴史を振り返り、国籍、アイデンティティ、戸籍の関係について考えてみたいと思う
参考:
Chapman, D. 2009. "Zainichi Korean Identity and Ethnicity" Routledge Contemporary Japan series, Routledge
講演2 「国家・制度への反証 −国籍、戸籍のない人びとの身分証明−」
陳 天璽氏(国立民族学博物館)
[概要] 人は誰でも、生まれながらにして国籍、戸籍を有しているものだと思ってはいないだろうか。人は誰でも、どこかの国に帰属していて当然だと思ってはいないだろうか。さらに、われわれは国家・制度によって与えられている身分証明書を絶対視してはいないだろうか。
近代国家が成立するなか、国々は自国の理念と法的システムによって、国民と他者を分類し、国を統治運営してきた。そして、統治の対象である個人を同定するシステムとして、国籍や戸籍などの制度に基づき、身分証明書を発行し、人びとの生死、婚姻、移動、財産などを掌握してきた。
これまで、あまり目にとどまることはなかったが、社会には、国籍や戸籍をもたない人びとがいることが明らかとなってきた。世界には、無国籍の人びとが1100万人存在すると推測されており(UNHCR)、また、数こそ確かではないが、発表者が行ってきた調査から、日本にも、国籍、戸籍を持たずに生活する人びとが少なからず存在していることがわかっている。なかには、国家間の制度のズレや手続きの不備により、身分証明書と実態が一致しないという事態も発生している。
本発表では国籍、戸籍のない人びと、つまり無国籍者や無戸籍者に焦点を当て、彼らが発生する原因を明らかにし、彼らの視点から、身分証明書の実態、彼らが生活のなかで直面している問題などを明らかにするとともに、そこから見えてくる国家と法、そしてアイデンティティとアイデンティフィケーションのズレについて考えてゆきたい。
参考:
陳天璽(2001)『華人ディアスポラ―華商のネットワークとアイデンティティ―』明石書店
陳天璽(2005)『無国籍』新潮社
陳天璽ほか編(2012)『越境とアイデンティフィケーション―国籍・パスポート、IDカード―』新曜社
大会テーマ|大衆文化とミュージアム
開催の趣旨
近年、ミュージアムで現代文化や現代史を展示する試みが増えてきました。「戦争」を筆頭に、複数の史観・表象がたえずせめぎ合うイシューを展示するということは、ミュージアムの政治的・社会的位置をも問われる先鋭な方法的営為であると言えます。
今回の研究大会では、国立歴史民俗博物館の常設展示リニューアルを主導された安田常雄氏をゲストに迎え、同館の現代展示における方法的な工夫や、「研究博物館」としての同館の位置などについてご発表いただきます。それを受けて、現代のオモチャを民俗展示の領域で扱っている兵庫県立歴史博物館の香川雅信氏と、マンガを対象としたミュージアムに携わってきた前・京都国際マンガミュージアム研究員の表智之氏がコメントします。
ミュージアムの現場での試みを切り口として、文化研究の政治的・社会的布置の現状とこれからについて、議論を深める機会となれば幸いです。よろしくご参集くださいませ。
- JR三ノ宮/阪神・阪急三宮より徒歩10分弱。
- アクセス・地図等はhttp://www.yg.kobe-wu.ac.jp/wu/access/index.html#sannomiyaを御参照ください。